その日は年に一度の定期健診、三種混合ワクチン接種の日でした。すでに柴っ子が一頭、順番を待っていました。同じ柴犬でもかなり濃い色で、ちょっと八重丸君に似た感じです。どうもこの子は巻き尾ではない。しっぽがさし尾の柴犬を初めて見ました。
「りくちゃん、どうぞ。」
順番が来て入室。りくは台に乗せられ、獣医さんと助手の方に囲まれました。
「暑くて食欲がないのですが・・・」

と申告したのに体重は昨年より増えていました。それでも10㎏には足りません。鼻の上の毛が薄くなっていることについて尋ねてみると、加齢のためで問題はないとのことでした。りくが鼻黒イタチみたいでも、もちろんりくにかわりありません。前回はその場で、つまり台の上に置かれたまま注射でしたが、なぜか今回の採血とワクチン注射は奥の部屋で行われました。兄と私は待合室で待機していましたが、りくの鳴き声はしませんでした。(別な子は鳴いていました。)
全部終わって会計とお薬を待つ間、りくはずっと「早く帰ろう」のアピールをしていましたが、あとに来た方に
「いい犬ですね。」
と言われました。
「はい・・・」
と答えながら、心の中で「いい犬ってどんな犬だろう。」と思いました。りくがいい犬かどうかなんて考えたことがなかったので、ずっとそのことを考えながら帰ってきました。同じ注射を初めて受けた時、まだ1歳になっていなかったりくは具合が悪くなったと父に聞いていましたので、今日も大事をとって午後はゆっくり寝かせました。こちらも一仕事終えた感じです。