第1巻 アンデルセン名作ものがたり
はくちょうのおうじ みにくいあひるのこ マッチうりのしょうじょ おやゆびひめ にんぎょひめ
第2巻 イソップ名作ものがたり
おおかみがきた かえるのおうさま らいおんとねずみ ありときりぎりす きんのたまご他
第3巻 グリム名作ものがたり
しらゆきひめ こびとのくつや ヘンゼルとグレーテル あかずきん おおかみと七ひきのこやぎ ブレーメンのおんがくたい
第4巻 日本の名作ものがたり
うらしまたろう いっすんぼうし はりまのふどき たけとりものがたり だいくさんとおにろく ぶんぶくちゃがま
第5巻 トルストイ名作ものがたり
おうさまとたか きゅうりどろぼう アッシリアのおうさま おおくまばし イワンのばか
第6巻 中国の名作ものがたり
さいゆうき こつばめのだいりょこう よるひかるたま まほうのふで
第7巻 アメリカの名作ものがたり
こじかものがたり ざくろのみ しょうこうし
第8巻 イギリスの名作ものがたり
ジャックとまめのき きょじんのにわ ふしぎのくにのアリス フランダースのいぬ ガリバーりょこうき *「きょじんのにわ」とはオスカー・ワイルドの「わがままな大男」のこと
第9巻 フランスの名作ものがたり
シンデレラ めぐりあい いえなきこ
第10巻 アラビアンナイト名作ものがたり
つぼのなかのおおおとこ ものいうとり アリババと四十にんのどろぼう
個人の作家としてアンデルセン以外にトルストイというのがいかにもすごい。子供向けの全集としては現在なら8巻までで終わっていたかもしれません。フランスに児童文学があるのかどうか私にはわかりませんが、それはイギリスと違って大人の方から子供に近づくという発想がないように思うからです。フランスでは「大人は判ってくれない」のが当然なのであって、子供をできるだけ早く大人にするのが大人の使命と考えているのではないでしょうか。今なら「星の王子様」を子供向けに押し込むという手はあるでしょうけれど。。監修が佐藤春夫と志賀直哉、第1巻の文を書いているのが村岡花子という恐るべき布陣ですから、私が何か言うのも僭越千万なことですが。
ドイツからは、グリムが入らなければ今ならケストナーははずせないでしょうし、好みによってはエンデが入るでしょう。アメリカの名作ものがたりは「ハックルベリー・フィンの冒険」や「オズの魔法使い」には目もくれず、この選択はさすがというべきなのかどうなのか。民話や昔話、寓話をまとめたものはやはり地域ごとに興味深いですが、日本の場合は恩返しの話がからむという顕著な特徴があるようです。イギリスの名作ものがたりを見て仰天したのは、取り上げられている話が「フランダースのいぬ」以外の全話において人間のサイズに関わる(巨人が出てくる、自分が巨人になる、小人になる)話だったことです。いくらなんでもこれが偶然だとは思えません。
「ガリバー旅行記」は本来子供の読む本ではありませんが、この観点から選ばれてしまったのかもしれません。ジョナサン・スウィフトは出身がダブリンであり政治にも大きく関わった人なのですから、そう単純なことではないでしょう。ほとほと人間のおぞましさ、あさましさを見せつけられて人間嫌いになってしまったのだろうと推測しますが、彼が根底に抱く思いは「言葉は通じない」ということなのではないかと思います。ヤフーという醜悪な生き物に自分も似ていることを見つめればやはり狂ってしまうしかないでしょう。インターネットサービス企業のYahoo!の名前の由来は「Yet Another Hierarchical Officious Oracle」(さらにもう一つの階層的でお節介な神託)と言われていますが、言葉を通じさせるものとして機能することが最重要の使命であるというのは皮肉なことです。